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678忘郷きみ美17海辺のグルマン 14 52 3日本のどこに行っても酒蔵がある。数百年続く老舗もあれば、新進気鋭の蔵元もあるが、浜通りでは震災後、新しい日本酒やワインづくりの気運が高まっている。その一つとして注目されていているのが、南相馬市の「haccoba -Craft Sake Brewery-」だ。モットーは「酒造りをもっと自由に」。その考えのルーツは「どぶろく」にある。どぶろくとは米と水を発酵させた後の漉す工程を経ない白く濁った酒のことだが、東北地方ではもともと家庭でどぶろくを造って楽しんでいたという伝統がある。明治時代以降、酒造りが免許制となってその自由は失われたが、ジャンルを超えた酒造りの楽しさをhaccobaは甦らせようとしているようだ。ビールの醸造に使うホップを発酵過程で加える製法による、白濁した淡いピンクの酒はフルーティ。米の甘さとホップの苦味が同居する。「定番のお酒とは別に、企業などとコラボして今までにない香りや味をもったお酒を造っています」とブランドディレクターの佐藤みずきさん。カカオやワインの残りかすを使った酒など、発想も味もユニークだ。川内村で立ち上がった「かわうちワイナリー」は葡萄栽培に適した土地探しからワイン作りをスタート。きっかけは、震災後の人口減少や高齢化に直面する中、新たな産業に挑戦し持続可能な村づくりをしていこうという村民の思いだった。ワイン作りはもちろん葡萄栽培も未知の領域だったが、2016年に村内のぶん米の苗を育てるハウスを使って春葡萄を植栽。栽培を始めた。翌年に会社を設立(筆頭株主は川内村)。「ここは標高750メートルで、いくつか候補の土地を見た中で一番日当たりのいい斜面でした。元は荒れた牧草地だったのですが、地元行政区の後押しもあり、葡萄畑に整備したんです」と話すのは統括マネーかつジャーの遠藤一ぼうきょうさん。ワイナリーの理念は「地域に愛されるワイン作り」だ。葡萄を植え、醸造所を建て、行政や村民をはじめとするボランティアの協力を得ながら、2022年春に初出荷に至った。シャルドネの酸味と香りは、葡萄畑の向こうの山並みが連なる川内村の広大な風景を映しているようだ。一方、富岡町の「とみおかワインドメーヌ」では今、しゅう地元でのワイン醸造を目指している。代表の遠藤秀文さんは震災後の2016年にワイン作りに着手。これまで醸造は他のワイナリーに委託してきたが、津波で流された自宅で唯一残った蔵を新たに醸造所にするという。いずれ富岡駅前から葡萄畑が広がる光景が生まれそうだ。」は大熊町で育てた酒米を用いて、会津「帰若松市で醸造しているお酒だ。香り豊かな純米吟醸酒に仕上がっている。大熊町は震災時、町役場も会津若松市に一時移転せざるを得なかった。このお酒には町民の故郷への思いと会津若松市への感謝が込められている。1 ピンクで甘酸っぱいhaccobaの定番、はなうたホップス。2 企業ほか他ジャンルとのコラボから生まれたhaccobaのお酒の数々。3 haccobaのブランドディレクターの佐藤みずきさん。4 帰忘郷。香り高い純米吟醸酒(左)とノンアルコールの甘酒。5 海を望む「とみおかワインドメーヌ」で葡萄の木を手入れする遠藤秀文さん。6 かわうちワイナリーの遠藤一美さん。背後の建物は醸造所。7 かわうちワイナリーの葡萄畑でスタッフたちが手入れを行う。8 川内産の葡萄で醸造したヴィラージュ(village)シリーズ。haccoba -Craft Sake Brewery-ブリューパブは金土日営業で予約制。グラスでhaccobaのお酒を楽しめる。在庫があればボトルの購入も可能。帰忘郷大熊町で育てた酒米を会津若松市で醸造。米と水だけでつくった純米吟醸酒はおおくままちづくり公社などにて販売している。かわうちワイナリーかわうち産の葡萄で醸造したヴィラージュ(Village)シリーズ、村外からの買い葡萄で醸造したリベル(LIBEL)シリーズはワイナリーでも販売している。 とみおかワインドメーヌワインはまだ販売できるまでに至っていないが、試験的な醸造は手応え十分の仕上がり。新しい醸造所の建設計画とともに、地元を含め周囲の期待は大きい。新たな酒を醸し出す酒&カルチャーを発信する新たな拠点づくり

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